去る1月22日(日)午後2時より、国立成育医療研究センター(NCCHD)にて「第5回小児リンパ管疾患シンポジウム」が開催されました。 当会からは事務局スタッフ3名が現地参加してきました!
当日の模様を、事務局最古参の仰木みどりが記事にまとめました。 過去全5回のシンポジウム総括も兼ねて個人的な意見も書きました。
前回(第4回)はオンラインのみでしたが、今回はハイブリッド方式でした。 会場に行ってみるとオンライン参加の方が多かったです。 コロナやインフルなどの感染症の影響に加えて、小さいお子さんをもつ親御さんにとってはオンラインの方が何かと参加しやすいと思います。 ひょっとすると、もしコロナ前にもオンライン開催があったら同じ状況だったかもしれません。 現地参加は医療者や他の参加者(嬉しい再会もありました!)と直接話ができるメリットがあるので、どちらかを選べるハイブリッド方式は良いと思いました。 今回のプログラムでは、まず初めに「リンパ管の構造と機能」について新潟大学大学院薬理学教授の平島正雅先生からお話がありました。 動脈、静脈、リンパ管それぞれの特徴や機能を、時に「ジッパー」や「ボタン」に例えながらわかりやすく説明して頂きました。血管やリンパ管の特性を生かした薬剤開発が行われているとのことで、この分野における研究がさらに発展し、難治性疾患の治療薬開発に繋がることを大いに期待しています。 次に、各リンパ管疾患の特徴について、日本赤十字医療センター小児外科の高橋正貴先生と慶応義塾大学医学部小児外科の加藤源俊先生より概要の説明がありました。 これまで何度かシンポジウムで説明を聞いていたにもかかわらず、「リンパ管腫症」「カポジリンパ管腫症」「ゴーハム病」の違いがなかなか頭に残らなかったのですが、今回ようやく残りました!何事も繰り返しの学習は必要ですね~。 ちなみに、当会前身の「特定非営利活動法人荻田修平基金」の頃、時々「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群」のピシバニール適応についての問い合わせがありました。リンパ管に限定されていないからでしょうか、シンポジウムでは取り上げられなかったので、今後取り上げて頂ければさらに参加対象者が増えるかもしれないと思いました。 続いて、岐阜大大学院小児科学臨床准教授の小関道夫先生より、保険適用開始から1年経過した難治性リンパ管疾患に対するシロリムス治療最新情報の説明がありました。 今年度始めに小関先生主導の研究班でPPI(医療への患者・市民参画)が発足し、医療者以外の様々なバックグラウンドの有志が集まり「シロリムスをはじめとする分子標的薬治療についての情報をいかにわかりやすく伝えるか」をモットーに活動しています。 当会からは橋本啓吾スタッフと私の2名が参加していて、セミナーなどの企画を担当しています。PPIホームページ制作チームによるHPは間もなく公開予定で、さらに、来る3月12日(日)には「第2回難治性血管腫血管奇形シロリムスセミナー」が予定されているので、シロリムス治療に関するより詳しい情報を知りたいかたはぜひPPIの活動をチェックしてみてください! イベントの司会は第1回に引き続いて橋本啓吾スタッフが担当します!
小関先生の説明のあと、東北大学病院遺伝科医員の野澤明史先生より、海外の研究者がまとめた世界のシロリムス治療結果に関する報告のお話がありました。 2018年にピシバニール海外無償提供事業(過去送付実績は80ヶ国)が終了して以来、個人的にはシロリムスを使用する国が増えたのではと推測していましたが、今回の報告によると14ヶ国にとどまっていました。イギリスやオセアニア地域、中南米、カナダからの症例報告がなかったのは正直意外でした。このあたりはもしかしたら調べれば出てきそうな気がします。 海外のデータ収集は非常に重要だと思いますので、引き続き新たな情報がアップデートされることを期待しています。 次に、新潟大学大学院小児外科学分野教授の木下義昌先生より「血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022」の進捗状況の報告がありました。昨年秋、当会からもガイドラインに対するパブリックコメントを提出しました。当会に声をかけて下さったのは初めてでした。 ガイドライン内に「一般向けサマリー」を新たに設けられたりなど、2022年改訂版では患者や一般市民に対する一層の配慮が感じられました。
木下先生が冒頭で仰っていた通り、ハンドアウトもパワーポイントも老眼の私には解読不能な小さい文字でびっしり書いてあり、膨大な作業量だったことが一目でわかりました。 関係者の先生方は診療業務、研究、学事、教育など多忙極まりない中この作業にあたられていたことを想像するとただただ頭が下がります。 シンポジウムの開催も然りで、 過去5回に及ぶシンポジウムは、一般に患者団体が主催するような内容も含めて医療者側が率先して実施して下さっていることに毎回感服してきました。 同時に、「私たち参加者側ははたしてお客さんのような立場で参加し続けていいのだろうか?」という疑問も持ち続けてきました。 今年度、小関先生のPPIに参加してみて漸く私の中で考えがまとまりました。 医療者側か患者団体側のどちらか一方が主体となって活動すると、どちらかが受け身(消極的)になってしまいます。これからの時代は、医療者と患者、一般市民が単に「診察する側、される側」という関係にとどまらず、どうすれば一人一人のQOL向上に繋がる医療に発展できるかといった共通の課題に対して共に取り組むことが大事だと思います。
私は外国語の専門家なので言語学習にたとえますと、一方的に与えられたり教えられたりした単語や表現はなかなか知識として定着しませんが、必要性を感じて自主的に調べ実際に使うと頭に残ります。
今後のシンポジウムは、PPIのように準備段階から様々なバックグランドのかたが関われば、参加者の学びの定着度が増しシンポジウムの目標である「協力・連携しながら共に進む」にさらに近づけると期待しています。
プログラムの最後は、埼玉県立小児医療センター小児外科医長の出家亨一先生による第4回シンポジウムの振り返りでした。
「今後どのようなテーマを取り上げてほしいですか」という質問の回答は、今後の歩む会の活動にとっても参考になると思いました。
シンポジウム終了後の交流会では、「リンパ管腫」と「リンパ管腫症とゴーハム病」のグループに分かれましたが、ほとんどのかたは後者の部屋に移動され、リンパ管腫グループはたったの3名となってしまい、否応なしに全員発言の機会を与えられました(汗)。
当事者のお二人には貴重なお話をシェアして頂きました。
また今回は、医療者側から当事者側に聞いてみたいというアプローチがあったのも大変よかったと思います。
オンライン参加のかたが会話に入りやすいように事前に質問を募集しておくなどの準備があると良いかもしれません。
閉会の挨拶で、NCCHD脈管疾患(血管・リンパ管)センター長、藤野明浩先生が「聞きたいことがあったら遠慮なくいつでも連絡してください」と仰ったお言葉は、私のみならずきっと参加者皆さんの心に強く響いたと思います。
主催して下さった小児リンパ管疾患研究班の先生方、そして小児リンパ管疾患シンポジウム事務局の皆様に心より感謝申し上げると共に、今後も引き続き日本のみならず世界中の脈管疾患の患者さんや保護者さんのお力になって頂きたいと願っています。
*記念に、全5回分のシンポジウム資料を並べてみました! 第3回までは午前の医療者・研究者向けにも参加していたので合計8部です。 各シンポジウムのプログラムや医療者の方々の昔のプロフィール写真と所属先の紹介文を再見して、8年間の歩みを感慨深く振り返りました。
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