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学会参加を通じて考えた患者参画

  • 執筆者の写真: 事務局
    事務局
  • 13 時間前
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更新日:12 分前

2026年7月16日・17日、岩手県盛岡市で開催された第22回日本血管腫血管奇形学会学術集会に参加し、「情報交換会」および「特別企画2 患者参加型 ~患者参画の望ましい形~」に出席しました。

特別企画の内容は患者団体内での共有に限られているため、本記事では詳細な紹介を控えます。共有可能な内容については、会員向けの報告書にまとめました。


ここでは、今回の学会参加を通じてあらためて考えた「患者参画」のあり方について、当会の考えをまとめます。


特別企画に登壇された細野亜古先生(国立がん研究センター東病院 小児腫瘍科・腫瘍内科)        ※ご本人の許可を得て掲載しています。
特別企画に登壇された細野亜古先生(国立がん研究センター東病院 小児腫瘍科・腫瘍内科)        ※ご本人の許可を得て掲載しています。

患者参画には、さまざまな形がある


患者参画の対象は、個々の診療や治療選択、医学研究、医療情報の発信、医療制度、疾患名の検討など、さまざまです。


関わり方も、情報を得ること、意見を伝えること、医療者と話し合うこと、企画や意思決定に加わることなど、一つではありません。 以下では、その中から当会と関わりのあるテーマについて述べます。


医療情報へのアクセス


専門学会において、研究発表や専門的な討論の中心となるのは医療者や研究者です。

当会は、患者や患者団体が医療者と同じ立場で研究発表や質疑応答に参加することまで、当然に求めるものではないと考えています。


一方で、疾患や治療について学ぶ機会は、患者や家族にも必要ではないでしょうか。


医療者が患者や家族に伝えたい情報と、患者や家族が知りたい情報は、必ずしも一致しません。例えば、特定の治療を中止した症例が専門学会で発表されることはあっても、そのような情報が患者や家族に向けて積極的に共有される機会は、少なくとも筆者の知る範囲ではほとんどありません。

患者や家族に向けて発信される情報は、限られた時間や機会の中で整理されることが少なくありません。患者や家族が幅広い情報に触れ、その中から自分たちに必要な情報を選べる環境も大切ではないでしょうか。


同時に、今回の学会参加を通じてあらためて意識したのは、学会で発表される内容には、まだ研究や検証の途上にある情報も含まれるという点です。


学会で得た情報については、自分や家族にそのまま当てはめるのではなく、その情報が研究や検証のどの段階にあるのかを踏まえて受け止める必要があります。自身や家族の治療に関係する可能性があると考えた場合には、発表の内容や根拠を確認し、現在の病状とどのような点で関係すると考えるのかを整理したうえで、主治医と共有することが大切です。


また、国内外では新たな研究や治療に関する情報が日々蓄積されています。患者や家族から新たな情報が共有された場合には、その内容を医学的な知見や患者の状態に照らして検討し、治療の選択肢となり得るかどうか、また適している、あるいは適していないと判断する理由を共有しながら話し合っていくことが重要だと考えます。

そのような対話を通じて、納得したうえで最適な治療をともに選択していくことが大切です。そのための一つの手段として、患者や家族が専門学会で情報に触れることにも意義があると考えます。


新しい治療法へのアクセスにおける患者側の関わり


患者や家族が国内外の医療情報を調べ、主治医と相談しながら新しい治療法の可能性を探ることも、患者参画の一つの形です。

海外で行われている治療が、そのまま日本でも受けられるとは限りません。導入には、安全性や有効性の確認、規制への対応、倫理面の検討など、多くの課題があります。患者側が希望するだけで実現できるものではありません。

一方で、新しい治療法の導入に向けた検討や、治療にアクセスするための環境整備は、医療者だけで進められるものでもありません。

当会は、2003年から2018年までの15年間、国内で承認されていたOK-432(ピシバニール)を、治療を必要とする海外の患者へ無償で提供する事業に携わってきました。この活動は、故・荻田修平医師が1992年に設立した「カルロスちゃん基金」の取り組みを継承したものであり、その始まりから数えると30年以上になります。

その活動を通じて見てきたのは、自国では受けられない治療の実現に向けて、患者や家族が自ら情報を集め、医療者や関係機関と協力しながら道を切り開こうとする姿でした。


日本にも、患者団体と医療者の働きかけが海外で使用されていた治療薬の国内導入につながった先例があります。 希少疾患であるシスチン症の治療に用いる「シスタドロップス点眼液」は、「シスチノーシス患者と家族の会」と日本先天代謝異常学会が厚生労働省へ未承認薬として開発を要望しました。その後、国内で臨床試験が行われ、2024年3月に製造販売が承認されています。患者団体の働きかけが、医療者、研究者、製薬企業、行政との連携を通じて国内導入につながった一例です。

「日本には日本の事情がある」という説明だけで議論を終えるのではなく、どのような選択肢があり、何が実現を難しくしているのかを、患者や家族も理解しようとすることが大切ではないでしょうか。

患者や家族が自ら情報を集め、主治医に問いかけ、治療の可能性と課題をともに検討していく姿勢は、選択肢を最初から閉ざさないためにも重要だと考えます。


当会では、患者や家族が治療の選択肢について考え、医療者と話し合う際の参考となるよう、海外の医療情報を会員向けブログで紹介しています。


参考:

当会が考える「患者参画」


患者参画には、患者や家族が自ら意見を伝えることに加え、患者団体が一人ひとりの経験や意見を集め、そこから見えてきた課題を整理し、医療や制度を検討する場へ届けることも含まれます。さらに、患者団体がその立場や特性を生かし、医療者や専門職と役割を分かち合いながら課題の解決に取り組むことも、患者参画の一つであると当会は考えています。


当会が取り組んでいる疾患名の見直しは、その一例です。患者や家族がどの段階から関与し、どのような形で意見を伝え、その意見がどのように検討され、最終的な判断に反映されるのかは重要な課題です。患者団体には、多様な意見があることを前提としながら、患者や家族の声を集め、議論の場へ届ける役割があります。


また、患者団体は、意思決定の場に意見を届けるだけでなく、医療者と患者・家族をつなぎ、それぞれの立場や経験を生かした活動を担うこともできます。

今回のシンポジウムに登壇された田中和美教授(群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学講座)は、以前、市民公開講座「患者のみかた」において、専門性を必要とする業務は専門職が担い、それ以外の業務をほかの職種や担い手へ移していく「タスクシフト」の考え方を紹介されていました。

この考え方は、患者団体が担える役割を考えるうえでも参考になります。それぞれの立場が得意とすることを担い、互いに補い合うことで、より良い取り組みや情報共有が可能になります。

医療者が一般向けに発信した情報であっても、専門用語や医学的な前提知識が含まれ、患者や家族には理解しにくいことがあります。医療情報の意味を損なわないよう注意しながら、患者や家族の視点に立ってさらにかみ砕き、子どもや一般の人にも分かりやすい形で伝えることは、患者団体が担えることの一つです。


また、患者や家族の経験から見えてきた個別の問題や困りごとを整理し、共通する課題として医療者や関係機関へ届けることもできます。医療者から発信された情報を患者側へ伝えるとともに、患者側の経験や意見を医療者側へ届けることで、患者団体は双方の対話を支えることができます。

その具体例の一つが、当会によるアートセラピーを取り入れたメンタルヘルスケアプログラムです。

このプログラムでは、患者団体が患者や家族の経験やニーズを踏まえて企画し、アートセラピーの専門家が内容を組み立て、実施しています。医療機関には、院内開催への理解と承認をいただくとともに、実施場所の確保や関係部署との調整など、患者や家族が参加できる環境づくりに協力していただいております。


このように、それぞれの立場から知識や経験を持ち寄ることで、一つの立場だけでは実現が難しい取り組みも可能になります。意見を伝えることにとどまらず、医療者、患者団体、専門職がそれぞれの役割を担い、より良い医療や社会をともにつくることも、患者参画の一つの形です。


患者参画にはさまざまな形があることを、あらためて実感しました。患者や家族が情報を学び、主治医と話し合いながら治療について考えることも患者参画です。患者団体が患者や家族の声を集めて届けること、医療者や専門職と協力しながら活動に取り組むことも患者参画です。


患者参画のあり方について、医療者と患者側がともに考える機会が設けられたことには、大きな意義がありました。

この話し合いが今回限りで終わることなく、今後も継続され、医療情報へのアクセス、患者団体の役割、疾患名の見直しなど、個々の課題について具体的な検討が重ねられることを望んでいます。

当会も、患者参画を求めるだけでなく、自らが担える役割を考え、実践していきます。

(文責:仰木みどり/NPO法人リンパ管腫と共に歩む会 事務局長)



 
 
 

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